「とりあえず」のスタートはどこでズレ始めるのか
目的がない行動は“他人の就活”になる
就職活動を始める際、特に最初の一歩は「周りが始めているから自分も」と動き出す学生が非常に多い。インターンのエントリー、説明会の参加、ESの提出、面接準備……。一連の動きに取り残されるのが不安で、意味はよくわからないままスケジュールに追われ、気づけば「就活っぽいこと」に時間を使っている。
この“なんとなく始めた就活”は、表面上は周囲と同じように見える。だが、中身には決定的な違いがある。それは「自分がなぜそれをしているのか」が抜け落ちている点だ。
他人の流れに乗ること自体は悪いことではない。しかし、自分自身が納得できていない状態で動くと、行動の一つ一つが“自分のための選択”ではなくなり、結果として他人に合わせるだけの就活になる。そして、そうした姿勢は必ず企業の目に映る。
企業は“自走力”を見る。だからこそ「なんとなく」は最も危うい
自分の選択に納得している学生は強い
企業が新卒採用で重視しているのは、「明確な志望理由」や「スキルの高さ」だけではない。それ以上に注目しているのは、その学生の「自分で動いて考えているかどうか」という“自走力”である。
自走力のある学生は、たとえ経験が浅くても、自分なりに情報を調べ、選考の場で「なぜこの業界に興味を持ったのか」「なぜこの会社に応募したのか」を語ることができる。反対に、なんとなく応募している学生は、その場しのぎの言葉を並べることしかできず、すぐに見抜かれる。
つまり、同じ説明会に出て、同じESを提出していても、「自分の言葉で話しているかどうか」が評価を大きく左右する。ここに“なんとなく就活”をしている学生のリスクがある。行動量が多くても、思考が浅ければ、それは評価されない。
「なんとなく選考」を続けると面接で破綻する
論理が通らない受け答えは信頼を失う
たとえば、面接で以下のようなやり取りがあったとする。
面接官:「なぜこの会社を志望したのですか?」
学生:「御社の〇〇に魅力を感じて…」
面接官:「なぜその点に魅力を感じたのですか?」
学生:「えっと……(沈黙)」
“なんとなく就活”の弊害は、こうした「深掘りへの耐性のなさ」として表れる。自分の中で納得して企業を選んでいないと、突っ込まれるとすぐに答えに詰まる。逆に、自分の言葉で納得して選んでいる学生は、自然と“芯”のある受け答えができる。だからこそ、採用担当者から「この子はちゃんと考えている」「信頼できそう」と思ってもらえる。
また、“なんとなく受けた会社”は内定が出た後も辞退する可能性が高いため、企業も慎重になる。選考の途中で「温度感が低い」と判断されれば、それだけで通過が難しくなるのだ。
「他人の軸」に合わせると、自分がブレる
「大手だから」「人気だから」は意思決定ではない
就活では「大手志向」「業界人気」が特に目立つ。たしかに誰もが名前を知っている企業に惹かれるのは自然な感情だし、待遇や安定性といった面でも魅力はある。だが、「みんなが受けているから」「親が安心するから」といった理由だけで志望先を決めると、自分のキャリアに対して他人任せの選択をしていることになる。
これは、選考中だけでなく、入社後のモチベーション低下にもつながる。仮に内定をもらって入社しても、やがて「本当に自分がここで働きたかったのか?」と悩むようになり、最悪の場合、早期退職という形になる。
「なんとなく選んだ企業」は、「なんとなく辞めたくなる会社」でもあるのだ。
本当に“就活がうまくいく人”は何が違うのか?
「自分なりに考える」姿勢がすべての出発点
就活がうまくいく学生は、特別なスキルや派手な実績を持っているわけではない。彼らが共通して持っているのは、「自分の選択に意味づけをする力」だ。
なぜその業界に興味を持ったのか?
なぜこの会社が気になったのか?
自分の強みは何か?それをどう活かせるか?
こうした問いに対して、自分の過去や性格、経験をベースに“自分の言葉”で語れることが強さである。これこそが、企業から「一緒に働きたい」と思ってもらえる大きな要因だ。
“なんとなく就活”ではなく、“自分の選択としての就活”を始めること。それが、最初の内定をつかむためのスタートラインである。
「なんとなく就活」から抜け出すために最初にやるべきこと
自分の行動の“起点”を見直す
「やること」ではなく「なぜやるか」から考える
就職活動における最初のつまずきは、「何をするか」から考え始めることにある。たとえば、インターンに参加する、エントリーシートを書く、企業研究をする──こうした行動は確かに重要だが、それが“目的”ではない。これらはすべて「内定を取る」ための手段にすぎず、その前提として「自分はどんな企業で働きたいのか」「何に価値を感じるのか」といった“軸”が必要になる。
“なんとなく就活”をしている学生は、この軸の構築を飛ばしてしまう。すると、行動に一貫性がなくなり、結果として志望動機が曖昧になり、選考での説得力が欠けてしまう。
まず取り組むべきは、行動の前に「なぜそれをやるのか?」と問いを立てることである。自己分析も、業界研究も、全てが“自分のための意味ある行動”に変わるのは、この問いがあるからだ。
就活の軸をつくる3つの視点
自己理解・他者理解・環境理解のバランスが鍵
“自分らしい就活”を実現するために必要なのは、「自分が納得できる判断軸」を持つことだ。判断軸があることで、企業選びにもESの言葉にも一貫性が生まれ、面接でも“自分の言葉”が出てくるようになる。その軸をつくるために有効な3つの視点を紹介する。
自己理解(自分を知る)
どんなときにやる気が出るか?
どんな環境でパフォーマンスが上がるか?
苦手な人や環境はどんなタイプか?
就活で多くの人が見落としがちなのが、「自分に合わない働き方」や「やりたくないこと」を明確にすることだ。やりたくない仕事や価値観を知ることで、自分に合う企業の条件が明確になる。
他者理解(他人との関係性)
周囲からどう評価されているか?
自分の強みや弱みをどう見られているか?
就活では「自己評価」だけでなく、「他己評価」も重要だ。周囲の友人や家族、バイト先の上司などに自分の特徴を聞いてみると、自分では気づいていなかった視点が得られる。
環境理解(社会や企業の理解)
どの業界がどんな価値を提供しているか?
業界ごとに働き方や雰囲気がどう違うか?
“なんとなく”で選びがちな「大手企業」や「有名企業」も、自分の性格や価値観に合っていなければ長くは働けない。企業のビジネスモデルや働く人の価値観、成長機会などを深く知ることが、自分とのマッチングを判断する基準になる。
誰かの“正解”ではなく、自分の“納得解”を探す
情報収集は「答え合わせ」ではない
現代の就活は、情報が溢れすぎている。SNSや就活支援サービス、YouTube、note、OB訪問アプリなど、多くのルートから「成功例」や「おすすめの就活法」が手に入る。これらは確かに役立つ情報だが、受け取り方を間違えると「他人の成功体験の模倣」になってしまう。
たとえば、ある学生が「このインターンに参加して成長できた」と語ったとする。だが、その成長体験は、その人の背景や価値観によって成立したものであり、自分にとっても同じ成果が得られるとは限らない。
重要なのは、情報を“真似る”ことではなく、“自分にとって必要かどうか”を判断するフィルターを持つことだ。つまり、他人の成功法は「選択肢の一つ」にすぎず、自分に合うかどうかは自分で検証する必要がある。
「なんとなく企業」を受けないための企業研究の視点
「知っている」ではなく「理解している」状態へ
企業研究というと、「会社概要を調べる」「売上高を見る」「採用ページを読む」といった作業的な行動に終始してしまうことが多い。だが、これらの情報を表面的に集めただけでは、本質的な企業理解にはならない。
企業を深く理解するには、以下の視点が有効だ。
その企業がどんな社会課題を解決しているのか?
その企業で働く人は、何にやりがいを感じているのか?
競合と比べてどこが違うのか?
また、社員インタビューを読む、IR情報を確認する、OB・OG訪問を活用するなど、生の声に触れることで、企業の“中の論理”を把握できるようになる。ここまで理解が進むと、「この企業を選んだ理由」に説得力が生まれる。
ESや面接で困らない準備とは
「深掘り」を意識した練習が不可欠
“なんとなく就活”のまま選考に進むと、ESや面接の段階で必ず詰まる。理由は簡単で、自分がなぜその企業を選んだのかが言語化できていないからである。だからこそ、ESや面接対策は「答えを用意する」ことではなく、「自分の思考を深める」ことに集中すべきだ。
おすすめは、自分の志望動機やエピソードについて「なぜ?」と3回以上問い返してみる方法。たとえば、
「この企業を志望した理由は?」
→「成長できそうだから」
→「なぜ成長できそうと感じた?」
→「若手にも裁量があると聞いたから」
→「なぜ裁量がある環境がいいと思った?」
このように深掘りしていくことで、自分でも気づいていなかった価値観や判断軸が見えてくる。これが、そのまま選考における“強い言葉”に変わる。
自分に合った企業選びをするための具体的ステップ
「なんとなく大手」「とりあえず人気企業」から脱却する
世間の評価ではなく、自分の“実感”を基準にする
“なんとなく”で企業を選んでしまう学生の多くは、「世間でよく聞く会社」「大学の先輩が多く行っている会社」「親が安心しそうな会社」といった“外からの評価”で企業を見てしまっている。このような選び方をすると、実際に働いたときのギャップが大きく、結果として早期離職に繋がるケースも少なくない。
就活の目的は「内定を取ること」ではなく、「自分が納得できる環境で働くこと」である。つまり、選考に通るかどうかよりも、自分がその会社の仕事や文化にフィットしているかを判断する視点が欠かせない。
企業選びのときには、「この会社で働く自分を想像できるか?」「この会社の価値観に共感できるか?」という“実感ベース”の問いを持つことが、ブレない就活に繋がる。
「企業の評価」より「企業との相性」を見る
相性の良さは“仕事観”と“働き方”の一致から生まれる
企業との相性を見極めるには、「自分の仕事観」と「その企業の働き方や価値観」がどれだけ一致しているかを確認する必要がある。ここでは、自分と企業をマッチングさせるためのポイントをいくつか紹介する。
① 働く目的ややりがいの価値観
「誰かの役に立ちたい」
「大きな仕事を動かしたい」
「安定して働きたい」
「自分の成長を最優先したい」
こうした目的意識と、企業が社員に求める姿勢や与える環境がマッチしているかを見極めることが重要だ。
② 働き方・職場環境の価値観
チームプレイが重視されているか?
競争環境か、協調環境か?
テレワークやフレックス制度など柔軟な働き方ができるか?
制度だけでなく、「実際にどのように運用されているか」をOB・OG訪問などを通じて確認しておくと、自分との相性が明確になる。
③ 評価制度やキャリアパスの透明性
実力主義か年功序列か?
若手でも重要な仕事を任せられるか?
異動や転勤の頻度は?
どれが良い・悪いという話ではなく、「自分に合うかどうか」が重要である。
自分軸で企業選びをするための行動戦略
思考だけでなく、体験からフィードバックを得る
自分の価値観に合う企業を見つけるには、「考える」だけでは足りない。実際に行動して体験し、そこからフィードバックを得ることが大切である。以下のような体験を積むことで、判断基準が磨かれていく。
企業説明会への参加
ただ話を聞くのではなく、「どんな人が話しているか」「どんな言葉を使っているか」「どんな価値観がにじみ出ているか」に注目すると、その企業のリアルが見えてくる。
インターンシップへの参加
数日間だけでも「実際の仕事に触れる」ことは、企業の内側を知るうえで非常に重要。業務の進め方、上司との距離感、働く人の温度感など、Webサイトでは得られない情報が手に入る。
社員との対話(OB・OG訪問)
働いている人のリアルな声は、何よりも信頼できる情報源。特に「入社前に感じていた印象と、実際に働いてみてどうだったか?」というギャップに注目すると、自分の思い込みに気づくきっかけにもなる。
就活軸がぶれない学生の行動パターン
「エントリー数」より「納得感」で判断している
就活の情報収集が進むにつれ、「平均エントリー数は何社?」「受けるべき社数は?」という話題が気になり出す人も多いが、実際に納得感のある就活をしている学生の特徴は、エントリー数ではなく“深さ”を重視している点である。
彼らは、「なんとなく受けた企業の数」ではなく、「本当に行きたい企業に絞るために、自分の判断軸を徹底的に磨く」ことに力を使っている。
企業ごとに志望理由を明確に整理する
自己PRやガクチカが企業の求める人物像と合致しているか確認する
内定が出たときに「行くかどうか」を事前に想定しておく
こうした行動ができている学生は、選考においても一貫したストーリーを語ることができるため、面接官の印象にも残りやすい。
企業選びの精度が選考突破率を決める
合わない企業は“落ちて当然”の視点を持つ
「受けた企業に全部落ちた」と言って落ち込む学生は多い。しかし、重要なのは“落ちた理由”の内省である。企業選びの段階でミスマッチだった可能性が高いなら、それは企業にとっても学生にとっても「正しい判断」だったといえる。
つまり、“合わない企業に落ちる”ことは就活において失敗ではない。むしろ、“本当に合う企業を探すためのプロセス”として位置づけ直すことで、メンタル的にも立て直しが効く。
この考え方を持てると、企業からの不採用を受けたときも、「自分のどこを見直すか」「どんな企業なら合うか」という前向きな思考ができるようになり、次の選考に繋げやすくなる。
内定をつかむために必要な思考と行動の“地に足のついた転換”
“就活は情報戦”を言い訳にしない力
情報収集より「判断力」のほうが差になる
就活をしていると、情報収集がうまい学生ほど内定に近づくと考える人がいる。たしかに、企業研究やESの書き方、面接対策などの情報は一定の役に立つ。しかし、肝心なのは「その情報を自分の中でどう処理するか」であり、誰かが言っていたことをうのみにしても、選考の場では説得力を欠く。
たとえば、インターネットで「◯◯業界は成長している」「△△企業は若手に仕事を任せる」と書かれていても、それを自分の志望理由にしてしまうと、他の就活生とほぼ同じことを言っているにすぎない。
「情報を集めること」に力を注ぐよりも、「集めた情報をもとに、自分がどう考えたのか」を話せるようになることの方がはるかに大切である。
行動するからこそ、自分の軸が定まっていく
インプットよりも“試しに動くこと”を優先する
多くの学生が、「自己分析がまだ不十分だから動けない」「業界研究をしないと企業選びができない」と考え、頭の中で悩み続ける。だが、自己分析も業界研究も、“机上で完成するもの”ではない。
実際にエントリーし、説明会に参加し、ESを書き、面接を受けてみる。このプロセスを経る中で、自分が何にワクワクし、何に違和感を覚えるかが見えてくる。
最初のエントリーは“練習”でもいい。第一志望群でなくても構わない。行動することでしか見えない“自分だけの感覚”が、就活の軸を強化する。
就活の勝敗は“準備量”よりも“解像度”で決まる
1社1社の理解をどこまで深められるか
選考に通る学生の多くは、何十社もエントリーしているわけではない。むしろ、10〜15社ほどに絞って、1社ごとの志望理由や理解を徹底的に深めている学生のほうが、圧倒的に評価されやすい。
特に面接では、次のような点がよく見られている。
その企業で働きたい理由に「具体性」があるか
他の企業ではなく“その企業”を選んだ理由を語れているか
企業理念やビジョンを“自分の言葉”で咀嚼できているか
これらは、浅い企業理解では到底たどり着けない。だからこそ、「たくさんエントリーしておけば安心」という発想ではなく、「この会社なら入社後のイメージが持てるか?」を起点に、企業との距離を縮める努力が必要になる。
内定の有無を左右する“行動の質”を高める方法
「受け身」ではなく「設計する」スタンス
“なんとなく就活”を抜け出す最大の方法は、自分自身が就活の設計者になることだ。「行ける企業に行く」「拾ってくれた会社に入る」ではなく、「行きたい企業に選ばれるために、自分は何をするか?」という思考にシフトする。
以下のようなステップで、行動の質を高めていくとよい。
ゴールを仮決めする(志望業界や職種)
100%正解でなくてよい。動きながら修正していく前提で、方向性を仮に決めておく。
そのゴールに必要な要素を逆算する
たとえば「営業職に行きたいなら、コミュニケーション能力をどう証明するか」を明確にする。
アピールすべき材料を洗い出す
ガクチカや自己PRの素材は、複数パターンを用意しておくと面接で応用が効く。
企業ごとに伝え方を調整する
同じ素材でも、企業の求める人物像に合わせて表現を変えると納得感が増す。
このように、“行き当たりばったり”ではなく、“設計された行動”に変えることで、就活は一気に主導権が自分に戻ってくる。
成果が出る学生がやっている共通点
「就活を日常に落とし込んでいる」
内定を得ている学生たちは、特別なスキルがあるわけでも、天才的な話術を持っているわけでもない。彼らが共通して行っているのは、「就活を特別なイベントにせず、日常の一部として行動している」ことだ。
通学の電車内で企業分析をする
アルバイトの経験を日記のように振り返って言語化する
先輩との会話を就活に活かせるヒントとしてメモしておく
こうした“小さな習慣”の積み重ねが、選考の場で大きな差を生む。就活を「頑張らないといけないイベント」から「自分を知り、自分に合う企業と出会うプロセス」へと再定義している点が、成果を出す学生の特徴である。
まとめ:就活は“自分を使って試す場”である
内定が出るか出ないかは、単に学歴や経験の差だけではない。自分なりに考え、動き、試し、失敗して、そこから修正を加える。その繰り返しができた学生が、最終的に納得感のある内定にたどり着いている。
“なんとなく”の就活を続けている限り、企業に振り回され、エントリーと面接を「数撃ちゃ当たる」の精神でこなすことになってしまう。しかし、自分の思考と行動に責任を持ち、「自分がどうしたいか」に主軸を置いて動ける学生は、選考を通じて“企業に選ばれる存在”になっていく。
就活とは、「正解を探す場」ではない。「仮説を立て、自分で検証していく場」である。この視点を持つことこそが、“なんとなく”から抜け出し、最初の内定を引き寄せる最大の鍵になる。
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